山羊座の鴎外と娘・茉莉№2
森鴎外の娘森茉莉はぶっ飛んでいる。そうとう浮世離れしている。でもって、その度合いが半端じゃありません。
それをより味わえるのは小説よりエッセイのほうです。
みごとな想像力、並外れた直感力と洞察力、高い美意識、そして決してゆらがない強い自我。類まれな感性の持ち主にかかると、ありふれた日常生活がまるで魔法をかけられたような非日常になります。その魔法はとってつけたような安っぽいからくりではありません。
森茉莉は生れ落ちたその時から、豊かな経験と教養と文化の象徴である父・鴎外からの愛情を慈雨のごとく浴びて成長します。これこそが本物の贅沢であり、茉莉自身が鴎外の、手塩にかけた作品に他ならないのです。
そんな茉莉が、その感性で日常を切り取るさいに生じる、本人と現実との間の化学変化がなんとも面白い。
子供を可愛いと思う気持ちは自己愛の延長といわれています。鴎外さんは、他所の子がいたずらをしたら「殴っていい」、しかし「泥棒もいたずらも、お茉莉がやるなら上等よ」などと言う親バカ。婚約が決まってからも茉莉をひざの上に乗せて(!)可愛がっていました。
茉莉だけでなく自分の子はすべて溺愛していた鴎外ですが、長女茉莉は特に、鴎外の影響が強かったようです。自分という存在に対する確固たる自信は、「偉大な父・鴎外に愛され、すべてを肯定された娘である私」というアイデンティティから来ているに違いありません。山羊座の鴎外と娘・茉莉№1
朝起きると女中が次から次へと身支度を整えてくれる。
洋服や帽子などはドイツから見本を取り寄せ、年に1~2度、彼の地であつらえさせた特注品。和服も趣味のいい両親が選んだ最高級のもの。
女学校から帰ると、フランス語やピアノの家庭教師が待っている。さらに鴎外が丁寧に勉強を見てくれる。
食生活は、当時の東京の料亭や洋食屋の最高の美味、料理上手な母が作る和食やドイツ料理、夫との遊学先のパリの美味などで彩られていました。森茉莉の料理
茉莉は社会性や他者への共感力、忍耐や努力や勤労の精神といったものとは無縁だったようです。
女学校の時は激しいイジメに遭い、二ヶ所にわたる嫁ぎ先からは度外れて役にたたないどうしようもない嫁ということで離縁される始末。ところが当の本人が、それをほとんど意に介さなかった。知り合いにいたら困だろうけど、すごい大物です!
鴎外原理主義の娘・茉莉。その才能は五十歳を過ぎてみごとに開花したのでした。
森茉莉の誕生日は1903年(明治36年)1月7日生まれ。管理人のまわりの山羊座の人も、独特の自己中心性を持ち合わせているにせよ、最終的には感心、尊敬できる人ばかり。山羊座は鴎外・茉莉親子を輩出しただけのことはあるな、と。
★森茉莉のエッセイ。味わい深い独特の文章、沸き出でる宝石のような言葉に圧倒されます。
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