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悲劇の母性・ローズマリーの赤ちゃん

 ロマン・ポランスキー監督のスタイリッシュなサイコ・ホラー映画、ローズマリーの赤ちゃんROSEMARY'S BABY(’68年・日本初公開)。

 あこがれのマンハッタンの高級アパートメントに引っ越してきたヒロインのローズマリー。

 可愛いらしいファッションに身をつつみ、カルチャースクールに通い、夫や友人とともに観劇や外食を楽しむ若妻。

 ローラアシュレイ風にリフォームした室内に最新の家電をそろえ、暖炉をたいてディナーを整え、リビングでパーティを開く生活です。cover

 映画が公開された当時、日本でそんなライフスタイルを実践している主婦はまれな存在で、映像で垣間見るアメリカの豊かさは圧倒的でした。

 戦後からずっと、日本人はこの豊かさを目指して頑張ってきたのだなぁとしばし感慨しきり。

 しかしそんな表面の豊かさとはうらはらに、画面には始終重苦しく沈鬱な雰囲気が漂います。

 それは、親切な隣人たちが、実は悪魔のしもべ(!)だからというわけではありません。

  この映画の恐さの根底にあるのは、一点の曇りもなく幸せそうな主婦が陥る、動かしがたい閉塞感と、狂気です。 

 何もとりたてて、本物の悪魔を登場させずとも、世の中には、親しげな隣人の悪意、カルトや妖しげな宗教、インチキ商法やネズミ溝といった、他人を食い物にしようとする物事が渦巻いており、不安と閉塞感を抱いているローズマリーのような主婦ほど、その格好の餌食になり易い現実を彷彿とさせるのです。 

 さらに、この映画がうまく出来ているのは、妊婦が妊娠によって陥る異常な状態をとことん利用していること。

 妊娠の経験がある方はおわかりでしょうが、軽度から重度まで、妊婦がマタニティー・ブルーに陥いるのはよくあることです。

特に悪阻の時の、味覚・嗜好の変化は、人により、なかなかスゴイものが。
水を飲んでも吐いてしまうので、病院で点滴を打っていた人。
「悪阻の時期、これを食べずにいられなかった物」の中には、お茶っ葉、青いトマト、炭酸が飲めなかった人が2ヶ月程ほぼコーラのみで生きていたとか、中には白墨をかじった(!)という人まで。

 ローズマリーが手づかみで、生のレバーをムシャムシャやるシーンに「わかるわ」と思った方、いるでしょう、きっと。

 さらに、家庭用の医学書を紐解けば、
「子宮外妊娠」「羊水異常」「逆子」「先天性異常」「前置胎盤」「早期破水」「胎盤早期剥離」「胎児死亡」
などといった用語が記載されており、加えて、息苦しさ、腰痛、下肢のむくみ、疲労その他でいやがうえにもナーバスになりがち。 

 一体、ローズマリーが、マタニティーブルーによる妄想でおかしくなっているのか、それとも…!?というあたりが怖い!

 ともあれ、ジェットコースターのような映画の醍醐味に思いっきり振り回されるのが一番いい楽しみ方でしょう。

 ただし妊婦さんにはお奨めしません
 産んでから観て下さい。

 映画の舞台となったのは、故ジョン・レノンも住んでいたN・Y最初の超高級アパートメント、ダコタ・ハウスです。

 ローズマリーを演じたミア・ファローの薄幸そうな雰囲気が作風にぴったり。

 悪魔の隣人ミニー・キャスタベットを演じたルース・ゴードンはこの作品でアカデミー助演女優賞を受賞しています。
 なるほどルースの演技は悪魔も思わず舌を巻く出来で、拍手喝采もの。彼女が10月30日生まれの蠍座だからって肩入れしているわけではありません。

 そして実は映画よりもスゴイのがアイラ・レヴィン作の小説「ローズマリーの赤ちゃん」の方。

 管理人の手もとには叔母から譲り受けた昭和42年10月発行・早川書房の新書版があるのですが、これがなんと販売当時、後半部分がブルーの袋で閉じてあったのです。
そして冒頭には読者に宛てた次のような記述が。

あなたはこの小説を途中でやめられますか?
やめられたら代金はお返しします

ー中略ー封をやぶらずに小社まで直接ご持参くだされば、お一人1冊につき代金をお返しします」

  もちろん封はとうの昔に破られておりました。叔母は途中でやめられなかったようです。

 早川書房の読者への粋なアプローチに頼もしさを感じつつも、「ホントにそんなに面白いのかいな?」と半信半疑で何気なく読み始めたとたん、文字通り途中で止まらなくなり貫徹してしまったのでした。

 時あたかも中間テストの真っ最中。試験勉強のほんの息抜きのつもりだったのですが…。第一級のエンターテイメントって本当に恐いです(笑)。

蠍座:10/23~11/21水の宮、支配星は冥王星

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